クロスカブ、もといエンジンのついた乗り物へのかなり強い動機を占めるのが、この「愛媛の閉塞感」。こう書くと愛媛批判と受け取られかねないのは分かっているのですが、どうにもこうにも他に表現しようがなく。平にご容赦いただきたく・・・
愛媛は良いところ!!
最初に言い訳めいたことを書いておくと、土地としての愛媛県はなかなかに魅力的です。
よく言われる温暖な気候、それによってもたらされる果物のおいしさと生産量(キウイフルーツの生産量が日本一なんだそうだ。来てから初めてしりました)。そして関東にいた頃は全くそんなイメージが無かったのですが、いわゆる地物の魚が非常に美味しい。スーパーに一匹単位で鯛が売ってたり、あと高級食材と信じて疑わなかった鱧(ハモ)もあたりまえに置いてあったりします。
違う土地から来た人間の眼には、非常に豊かな土地に映りますし、実際に美味しい食材で溢れた土地だと思います。
そして、風光明媚といえば、瀬戸内海の景色は、海といえばほぼ東京湾で終わっている私には息を呑む美しさでした。今でも出張帰りに飛行機の窓から見える島々には、心が踊ります。あと、全国でもっとも家賃が安い地域なんだとか。少なくとも、ずっと上位にいるのは間違いありません。実際に関東から見ると、この値段でこんな広さを借りられる? と驚きました。
「範囲」と「経路」仮説が再び
がしかし。
こういった土地を訪れるのが、公共交通機関だと非常にめんどくさい。行っていけない事はありませんが、非常に時間も労力もかかります。つまり、周囲に良いところはあるのに、乗り物がないと気軽に行ける距離ではなくなってしまうのです。正直、旅行するにしても(目的にも寄りますが)、車があるかないかで見られるもの、行ける場所がまるで変わってきます。
メンタルを蝕む
一つ前に書いた田舎の「範囲」と「経路」問題を、さらに拡大したような問題がここでも起きてきます。そして、この環境が確実に私のメンタルを蝕むようになりました。いわゆるうつ病の典型的な症状が、自分自身に起こってきます。
そもそも趣味もなく、わりかし進んで長時間労働をやってしまう人間でした(最近はもう色々割り切って抑え気味です)。職場滞在時間は、現在の会社の中でもたぶんトップクラスです。何の自慢にもなりませんが。
環境が変わって必死だったこともあり、土日も結構当たり前に出社してました。何の自慢にもなりませんが。もともと四国に来る前は、生きるのに必死で同じような感じで働いてました。ただ、わりと楽しくやれてたんですよね、その当時は。だから「自分はそういう働き方が合ってるんだろう」なんて思い込んでいました。そんなわけで、愛媛に来てからも同じ感じの労働時間と働き方でやってました。
ただ、明らかにおかしくなりました。朝、起きられない。寝ても寝ても寝足りない。目は覚めているけれど、起きあがることができない。なんとか這うようにして会社にいく。頭が回らない。ミスが増える。パソコンの前に座っても何も出来ないまま数時間が経つ。濁ったベールをかぶっているような感じで自分の思考もはっきりしない。涙が出てくる。満腹感がない。
疲れているのかなぁ、と思っていたものの、どうにもなりません。周囲の人から指摘され、それがたまたま非常に気配りの出来る方で、こっそりと産業医の面接を受ける運びになりました。そして、普通の状態ではないことがはっきりします。
「小さな気分転換が」できない
愛媛に来る前と同じように働いていました。ではなぜ、メンタルがふさぎ込んでしまうようになったのか。
恐らくはそれまでで出来ていた小さな気分転換が、日常から消え失せてしまったからだと考えています。帰宅時に本屋に寄る。ちょっと仕事の帰りに足を伸ばして買い物に行く。途中の駅で降りて、喫茶店で少し本を読む。自覚してませんでしたが、こういうところで小さな息抜きを繰り返すのが自分のパターンだったようです。
それが、愛媛に来てから全くできていない。完全に自宅と職場の往復です。土日を休んで旅行にでも行けば? と今にしてみれば思いますし、こっちに来てから何度も思いました。小さな気分転換ならぬ「大きな気分転換」でしょうか。実際、一度や二度はちょっと足を伸ばして遠出したこともあります。
ところが、これが非常に面倒なんです。バスの本数が少ない。電車の本数も少ない。終電は早い。お店が閉まるのも早い。目的地が一箇所だったとして、「ついでにあそこも」があまりない。自分がもう少し、例えば電車移動そのものを楽しめたり、そういう性格だったら全然違ったと思うのですが、とにかくうまく適応できませんでした。
結局は面倒臭さが勝り、また仕事への焦りなどもあり、家と職場の往復になります。小さな息抜きがない、純粋な往復です。「大きな気分転換」は面倒。趣味らしい趣味もない・・・。どんどん、閉じ込められているような感覚になってきました。「閉塞感」としか言いようがありません。結果として、この閉塞感はかなりのところまで行ってしまうことになりました。
少し行動範囲を広げたい
もちろん、原因は気分転換が出来ないだけではありません。職場の事とか、仕事のこととか、人間関係とか、もっと根本的なものがあるのは明白です。しかし同じようなものは以前からあって、そして以前は「いなす」ことができていた。愛媛ではできない。それがこの状態を産んだ一因だと考えています。
最初に書いた愛媛の好意的な雑感は、別にお世辞でも何でも無く、本当に良い土地だと思う。ただし、それを堪能するには移動手段が必要と。「経路」にちょっと寄り道先がないため、自転車だけでは行けるところも決まってきます。
何かエンジンのついた移動手段がほしいなぁ。ネットで車のサイトを見たり、そんなことが始まりました。