杞憂だけど震災への備えとして原付2種バイクを考える:なぜ40代でバイクに乗ろうと思ったのか4

随想Log

クロスカブ(というかバイク)を考えた理由の一つに、いずれやってくる震災時の移動手段というのがあります。生活の足の問題とか「経路」と「範囲」問題に比べると軽いものなんですが。

自然災害には出来る範囲で備えたい

震災への備えというと大きなことのようですが、田舎の「範囲」と「経路」問題で書いたような日常的な不便さや、愛媛の閉塞感で買いた、精神的開放感を求める気持ちに比べれば、オマケのようなものです。ただ、先のような日常的な不便さが、震災にあったような場合、より大きな問題として自分の前に立ちはだかるのでは、という気持ちがどうしてもしてしまいます。

2011年の3月11日、言わずもがなの東日本大震災の日です。その当時、私はなんとか食いつなぐための掛け持ち仕事のひとつの職場だった、東京のとある古いビルで仕事をしていました。初めて体験する長い揺れ。時間もさることながら周期の長い揺れ方で、足がすくんだことを覚えています。その日は電車がとまって、職場に雑魚寝で止まりました。夜も続く余震と緊急地震速報。家に帰れば家具が散乱していたくらいで大した被害は受けていません。それこそ、東北沿岸の方を想えば、何も言えないレベルです。ただ、あの地震は私の考え方に色々と変化をもたらしました。

「守られた土地」愛媛松山

それから数年後のことです、愛媛に来たのは。不動産屋でアパートを探す際に「震災が怖いので、できれば築浅の物件を。鉄骨だといいんですが……」と条件の最初に地震対策を口にした私に、不動産屋さんは半笑いで言いました。

この土地は守られてるから大丈夫ですよ

もちろん、私の希望は可能な限り聞いてもらって納得の行く物件を見つけることが出来たわけですが、「この土地は守られている」はどういうことなのか、理解に苦しみました。

一年住んで、ようやく意味を理解します。本当に「守られている」と表現したくなるほど、穏やかな土地です。例えば台風。九州各地や四国の太平洋側である高知県・徳島県、また瀬戸内海を挟んで対岸の広島県などに甚大な被害が出ていても、ちょっと風雨が強い、くらいで済んでしまいます。穏やかな土地です。

気候は温暖、地震も大きなものは記憶にない。「守られている」という言葉を使う理由もわかります。

本当に「守られた土地」??

ところが調べてみれば、「芸予地震」という言葉があるように、決してこの地方も安全というわけではありません。考えてみれば「道後温泉」で有名なわけですが、温泉といえば火山です。火山といえば……。

四国には火山はありません。火山がないので地震が起きないかというと、起きないと言われていて起きた神戸の震災があります。別に地震が起きないわけではないんです。日本ですし。そして、いずれ来ると言われている駿河・四国沖の南海トラフが震源となる大地震。

原発問題もあります。愛媛県にある伊方原発は、中央構造線のほぼ真上にあります。調べれば調べるほどこれは「やばい場所」にあります。もっとも、原発の事故がこの距離であったら、原付バイクが1台あるかないか、なんてまったく意味を成さないことは分かりきっていますが、とにかく「守られてる」という一言で済ませるのは色々と無理がある土地です。もっと言えば、日本の中はどこもだいたい同じようなものだと思いますが・・・。

近いところで2016年4月の熊本地震は、すぐお隣で起きています。またこの地震では、地震に関するこれまでの科学的なセオリーが通用しないケースもあることも言われています。2018年7月の西日本豪雨の時には、愛媛県内にも被害がありました。特に西日本豪雨時の宇和島を初めとした南予地方の被害は、話を聴くだけでも想像を絶するものがあります。地震ではありませんが、しかし自然災害というくくりでは、「守られている」の一言で済ませられる状況ではないとどうしても考えてしまいます。もう「守られている」神話はちょっと横に置いておきたいと、少なくとも個人的には思うのです。

杞憂としての震災への備えとバイク

「杞憂」という言葉があります。文字通り杞憂なのでしょうが、でも、もし、そういう場にあって運良く生き延びたとして、その後の生活はどうなるのだろう? 考えてみると、やはりこの土地で移動手段が限られると、色々と対応できることが限られてきます。

じゃあ災害時における移動手段としてどうなのか。一般社団法人 日本二輪車普及安全協会というところの災害における二輪車の有用性というページを見ると、二輪車の機動性は、車の走行が難しいシーンでも、ある程度走れてしまうシーンが多い印象を受けます。

とはいえ。本当に震災対策としてバイクを考えるのであれば、オフロードタイプを買って、しかもテクニックも磨くような準備が必要でしょう。そこまでは出来ません。練習したところで、自分の運動神経では動画で見るような華麗なオフロードライディングなど、どう考えても無理なことが分かります。「杞憂としての」とか「オマケ」と書いてるのは、そこまで、つまり実際にどんな状況でもエンジンがついた二輪車があれば大丈夫という状態には、なかなか難しいことは明らかだから、という理由です。

また、本気で災害対策を考えるのであれば、車を買って、トランクに防災グッズを絶えず積んでおく方が、よほど現実的でしょう。

移動手段はあるに越したことはない

ただ、移動手段が一つあるかないかは、色々と大きい気がします。特に、移動距離が基本的に長い田舎(と言ってしまいます)の愛媛では、エンジンのついた移動手段を持っておきたい気持ちが常にありました。

この「震災への備え」は、この土地に来た頃から頭にありました。その間に車にしようか、バイクにしようか、といった選択肢に関する悩みもあり、紆余曲折を経てカブにたどり着いています。色々あったわけですが、生活第一、趣味や楽しみとしてバイクに触れてみたい。ついでに、もしもの時に持っていることでなにか負担が減るのならばそれに越したことはない。移動手段に興味を持ち、最終的にカブに興味が湧いた理由を正直に紐解くと、こういう考えがあったのも事実です。